ニューヨーク・タイムズ 社説(2016/9/9)
北朝鮮による核兵器の実現 ※印刷用PDF
中国以上に北朝鮮に影響力を持つ国はない。中国は北朝鮮に食糧と燃料、死活的な交易ルートのアクセスを提供している。北朝鮮は9日に5回目の最も強力な核実験を行い、またも、核プログラムをやめさせようとする国際的な努力の失敗を浮き彫りにさせたが、北京の反応は結局、子供だましであった。
中国外務省は声明で、核実験に対する「強い反対」を表明し、朝鮮半島の非核化の公約を再確認した。中国外相は、北朝鮮に挑発的な行動をエスカレートさせることをやめ、核実験を禁止した国連決議を順守することを促した。
中国は6か月前、国連安保理が北朝鮮に課したもっとも厳しい核関連の経済制裁に重要な支持を与えたが、国境地域における最近の報道によると、中国が大きな抜け穴をつくってきたおかげで、貿易は続き、急激に増加しているようである。研究者たちは北朝鮮の核兵器プログラムのための部品を調達する能力が実際には改善していることを見抜いていた。
北京は長い間、北朝鮮の崩壊と南朝鮮とその同盟国・米国による朝鮮半島統一につながる厳しい制裁には反対してきた。一部の専門家たちは、北朝鮮の金正恩指導者は中国の報復を恐れる理由がないとのことで、実験を行ったという示唆をした。
すなわち、中国の曖昧さが今の危機に至らしめた。北朝鮮が多分21個分の核爆弾に相当する核分裂物質を保有し、一連のミサイル発射実験の後、ミサイルに搭載することのできる小型の核弾頭をつくり、米国と地域の同盟諸国を威嚇することのできる日が近づいている。
北朝鮮の核能力が進展すればするほど、その脅威を解消することがより困難になり、分かりにくくなってくる。今まで、北朝鮮は国家の存続を保障するために核兵器を追求していると広く推測されてきた。しかし今、一部の専門家たちは、金正恩氏は限定的な核戦争を戦い勝利する準備をしていると疑っている。
最近、米国と南朝鮮が北朝鮮の攻撃からの防衛のために米国製の進歩したミサイル防衛システムを南朝鮮に配備することに合意したのも、この増大する脅威のためである。この決定は、中国を怒らせ、米国と中国が北朝鮮に協力して対応することをより難しくしている。
9月9日にオバマ大統領は、制裁をしっかりと履行し新しい制裁を科すことを呼びかけた。しかし、楽観することはできない。成功は、中国が北朝鮮との貿易を遮断することに協力するかどうかにかかっている。北京にとって、北朝鮮の核プログラムの継続を許すことが中国と地域の利益への現実的脅威となることは明白であるが、中国は協力しそうにない。米国は、同盟諸国と共に北朝鮮を出入りする船舶を止めるか、銀行へのアクセスを遮断するなど、自らの選択肢をもっているが、そのような措置は自らに危険をもたらす。
制裁以上に、永遠の解決には、ほとんど間違いなくある種の交渉が求められよう。そのような動きに対しては、議会で共和党が確実に反発するのは確実であろうとが、である。金正恩政権は7月に対話開始の提案ともとれる声明を発表した。ほとんどの専門家たちは、現時点における唯一の現実的目標は、北朝鮮の核とミサイルの実験を止めることで、すべてのプログラムの放棄ではないと述べている。過去10年間、北朝鮮の核の野望を封じ込めるうえでほとんど何もなしえなかったので、オバマ氏の後継者はこの加速する脅威に対し切迫感をもって注目する必要があろう。(“North Korea’s
Nuclear Enabler”, by the Editorial Board, Sep. 9, 2016)